執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
障害年金「難病」の請求が難しい理由とは
札幌の社会保険労務士・中斉と申します。障害年金の請求代理業務などを手掛けております。
ひとえに障害年金の請求といっても、悩みは多種多様で、一筋縄ではいかないものです。
弊事務所、いわゆる「難病」といわれている傷病を患う方からのご相談をよく受けます。
よくある質問として『ネットの情報では「難病」の請求は難しいとあるのですが、本当ですか。また、それはなぜでしょう』というものが挙げられます。
「難病」の請求が難しい理由は色々とあるのですが、大きな理由として、確定診断がなされるまで、多くの時間を費やすケースが多いということが挙げられます。
症例数が少ない、あるいは症状が多岐に渡るなどで、そもそもどの病院へ行っていいものかわからず、近場の内科医にかけこむ。そして、「風邪です」とか「過労です」とか言われ、なんだかわからないけど風邪薬を処方されたりする。そんなことを何度も繰り返すのが、「難病」患者さんの特徴です。
複数の病院を渡り歩き、確定診断がなせるまで5年以上かかったなどという方はザラにいらっしゃいます。中々、その病気における専門知識を持ちえた医師には中々出会えないものです。
それでは、障害年金における初診日を確定させるのは、とても難易度の高い作業となるでしょう。
初診日がわからなければ、そもそも請求のスタートラインにも立てない。
障害年金、とくに「難病」が難しいといわれる理由のひとつです。
請求者:30代後半・男性、障害厚生年金3級
シエーグレーン症候群
数カ月、「シエーグレーン症候群」の請求をしました。障害厚生年金の請求です。
Aさん(30代後半の男性)。女性患者が多いといわれているシエーグレーン症候群ですが、この方は男性でした。
7年ほど前、微熱・倦怠感・めまい・体の痛みなどを自覚したといいます。これこそが、シエーグレーン症候群の症状なのですが、当初夢にも思いませんでした。
最初は、「風邪でもひいたかな」くらいに考えていました。近所の内科で診てもらったところ、医師からは『風邪ですね』と言われ、1週間ぶんの風邪薬をもらいました。
しかし、1週間経っても体調は全く改善されません。
最初に病院に行ってから10日ほど後、今度は上司の勧めで、会社近くの内科に行きます。その時も、微熱・倦怠感・めまい・体の痛みを訴えましたが、「仕事が忙しすぎるのでしょう。過労ですね」と言われました。
こちらの真剣な訴えも全く相手にされず、「気にし過ぎですね」などと笑われたりしました。
そんなこんなで1年過ぎます。その間、受診した病院はなんと9件。ついた診断書は「風邪」、「疲労」、「上気道炎」、「唾液腺炎」、「扁桃痛」、「慢性疲労症候群疑い」であり、シエーグレーン症候群と確定診断をなされることはありませんでした。
体調は、1年以上改善せず、仕事のパフォーマンスは落ち、会社を解雇されてしまいました。
会社を辞めてから2ヵ月後、知り合いの「良い病院がある」という話から、藁をすがるような思いで受診した内科で、初めて「シエーングレーンの疑い」を示唆されます。体調を崩して、初めて病院を受診してから1年2カ月後のことです。受診した病院としては10件目になります。すぐに、紹介で11件目となる専門医を受診し現在に至ります。
さあ、この場合、初診日はいつになるのでしょうか。
とても重要な「初診日」 障害厚生年金と障害基礎年金の差はとてつもない
これが、もし発病から10件目の病院で「シエーグレーン症候群」と診断されるまで、一貫して会社員として働き、厚生年金の被保険者であったなら、さほど問題はなかったのです。というのも、請求者・Aさんの現在の症状は、体調はけっしてよくないものの、一日中寝込むほどではなく、短時間程度の事務仕事なら無理すればなんとかできる状態だったからです。
これは、まさしく、障害年金3級の症状です。
障害厚生年金は3級まであるものの、障害基礎年金は2級までしかない。
Aさんの場合、シエーグレーン症候群と疑われた日あるいは確定した日は、会社を辞めた後の国民年金被保険者の時だったのです。ここが初診日ならば、障害基礎年金の対象となり、現在の症状では2級は厳しく、障害年金が支給されないことが予測されます。
なので、Aさんは、「シエーグレーン症候群の疑い」と診断を受けた時より前の、1件目から9件目の病院を初診日としなければならなかったのです。
3級がある障害厚生年金と、2級以上しかない障害基礎年金の差はとてつもなく大きいのです。
知られているようで、意外に知られていないのがこの事実です。
さあ、この初診日はいつとして請求したでしょうか。
1件目の病院に行った時と、現在に至るまでのAさんの症状が変わらなかったということを勘案し、1件目から、9件目の病院まで、全て受診状況等証明書を取得し、症状が現在に至るまで継続して変わらないということを証明しました。
また、9件目の病院で「慢性疲労症候群」を疑われていたということでしたが、現主治医の話では『Aさんの症状は、慢性疲労症候群に近いものがある』ということでした。つまり、ここで、すでにシエーグレーン症候群に罹患していたことが証明されています。
9件目の病院受診時は、厚生年金被保険者だった時ですので、9件目の病院受診した日が初診日だとしても、じゅうぶん障害厚生年金の対象となるでしょう。
初診日を1件目の病院受診時とし、副次的に「1件目病院受診時から9件目の病院受診時までの期間内に初診日がある」という別紙の申立書を添付し、障害厚生年金を請求しました。(請求時には初診日があいまいだったこともあり、取りあえず事後重症請求で出しました。初診日が確定されたのを見計らって、状況によっては認定日請求に差し替えることも視野に入れています。)
その後、無事、「障害厚生年金3級」が認められました。
このように、「難病」の請求は、確定診断までの時間があまりにも長すぎたりしますので、初診日を確定することがむずかしいのです。
はじめて請求する方が、これを行うのは非常に難しく、また非常にストレスフルなものであります。
悩んでないで、近場の社会保険労務士に相談されることをお勧めいたします!
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