障害年金、社会的治癒について考えてみましょう。
障害年金の請求において、「初診日」の確定は非常に重要なポイントとなるでしょう。
納付要件はもとより、厚生年金か国民年金など、どの制度に加入していたかで、受給金額が大きく異なってくるのです。
初診日は、請求傷病において、実際に医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいうのですが、これが一筋縄ではいかず、候補にあげられる初診日が複数にわたるケースも多々あります。
初診日について掘り下げていくと、「社会的治癒」という概念にたどりつくでしょう。
社会的治癒について書かれた、優れた書籍(裁決例による社会保険法 - 国民年金・厚生年金・健康保険 -著:加茂紀久男)がございますので、一部引用いたします。
>>> いわゆる「社会的治癒」が認められる場合には、社会的治癒の状態が存在した後、最初に医師にかかった日が初診日となる。社会的治癒とは、傷病が、医学的な意味では治癒したとはいえないが、その症状が消滅して社会復帰が可能となり、かつ、治療投薬を要せず、外見上治癒したと見えるような状態がある程度の期間にわたって継続することであり、保険給付はこれを治癒に準じて扱うことが承認されている。もっとも、治療投薬については、全くこれをしない状態であることは必ずしも必要ではなく、維持的・経過観察的な治療が継続していても社会的治癒の成立を妨げないとされている。社会的治癒と認めるのに必要な寛解期間の長さは、傷病の性質によって異なり(たとえば癌の手術をしたような場合や精神病の場合には、ある程度長めな寛解期間が必要とされる傾向にある)
例えば、19歳の頃に精神疾患になり、精神科を受診し2年ほど通院していた大学生がいたとしましょう。
当然この場合、初診日は19歳の頃精神科を受診した日になります。ということは「20歳前障害」ということになり、障害基礎年金の対象になるのが通常です。
しかし、体調が回復し寛解。その後大学を卒業して就職。数年間順調に会社員生活を送りました。しかし、32歳に病気が再発し、再び精神科を受診したとします。この寛解、大学を卒業し、32歳に再発し再度精神科を受診するまでの数年間を「社会的治癒」の期間として認められれば、32歳の会社員の頃が初診日となり、障害厚生年金の対象として請求することも可能なのです。
となれば、障害基礎年金の時とは違い、もし2級だとしたら、金額はかなり高いですし、障害厚生年金は3級もあるので、年金受給のハードルがかなり低くなるのです。
どうしたら社会的治癒が認められるのか?
では、社会的治癒と認められるためには、どういったものが必要なのでしょう?
簡単に言えば以下のものが必要です。(一例です)
①継続し、安定した就労期間(厚生年金に加入している期間が、継続して最低でも5年〜8年くらい必要です。)
②日常生活を健常者と同様に送っていたことが証明され書類(物証)。
※同僚の第三者証明書・スポーツクラブの加入期間を証明できるもの・趣味のサークル活動を継続して行っていたことを証明できるものなど
例えば、以上のものを集めて、請求書に添付し、請求するのです。もちろん、別紙で「社会的治癒」を申し立てることも必要になってくるでしょう。これらは、初めて請求する方には非常に難しいものと思われます。これこそ、障害年金に詳しい社会保険労務士等に相談・依頼することをお勧めいたします。
しかしです。障害年金受給のハードルが上がるとともに、並行して社会的治癒認定も厳しくなっております。
ほんの数年前には認められたであろうケースが、「不支給」になっている。これが、最近の障害年金の現実です。もちろん不服申し立てをしますが、社会保険審査官も審査会も、社会的治癒に対しありえないほど厳しい。例えば、社会的治癒は最低でも10年は必要と言っていた厚生労働省・年金局の職員もいました。まあ、その件に関しては、おいおい場所を変えて話していきたいと考えております。
しかし、会社員として仕事を全うし、社会保険を納付し、日常生活も健常者と変わらぬほど普通にこなしてきたことを認めないというのは、言語道断であります。
「社会的治癒」。みんなで考えていきたいと思います。
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