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障害年金 遡及請求「遡り」について考察します

 

執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)

 

札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10-102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。

 

 

 

障害年金 「遡り」とは障害認定日請求のことです

 

札幌市厚別区で社会保険労務士事務所を運営している、中斉と申します。障害年金の請求・不服申し立てなどを中心に活動しております。

 

よく、お客様の相談で「遡り」の請求について聞かれます。遡及請求のことです。

 

「遡りの請求はできないのでしょうか?」といった相談です。

 

しかし、よくよく聞いていると、そもそも「遡り」の意味をわかっていない方が少なからずいることがわかります。

 

遡り請求、つまり遡及請求とは、どういった請求なのでしょうか。

 

遡及請求とは、つまり、遅れて行う障害認定日請求のことです。

 

まずは、障害認定日についておさらいしましょう。

 

請求傷病における初診日から1年6ヵ月経過した日を障害認定日といいます。まず、ここで障害年金を請求する権利が生じるのですが、この時点で障害年金を請求することを障害認定日請求といいます。

 

しかし、障害認定日当初、障害年金という制度そのものも知らなかったなどの理由で請求していないという人は少なからずいらっしゃいます。

 

うつ病の患者の例をあげまず。

 

うつ病で平成22年1月10日に初めて精神科を受診したとしましょう。この場合、平成22年1月10日が初診日となります。そして障害認定日は平成23年7月10日ということになります。この時点で、納付要件のある方は、障害年金の請求をする権利が生まれます。

 

しかし、この方も(仮にAさんといいます)、認定日当時、障害年金のことを知らず10年以上の月日が経過してしまいました。そして障害年金の請求をはじめて意識します。

 

Aさんの病状は、初診日以来体調が回復せず、年金事務所へ行き障害年金の相談をします。そこで、遡及請求のことを知らされます。

 

「提出する診断書は、障害認定日のものが1通。現在のものが1通です」そう説明をうけるでしょう。

 

障害認定日の診断書を提出し、障害年金が認められたら、この場合平成23年7月に受給権がつき、翌8月に支給されることになります。

 

しかし、障害年金の支給には時効があり、請求権は5年前までが限度です。「5年遡る」ということはこのことです。

 

正確には、この場合10年遡り、5年分しか戻ってこないということですが・・・。

 

だから、なるべく早く請求したほうがいいのです。これは金額的なものだけではなく、診断書などの医証の取得の問題でもあります。

 

10年前の受診状況等証明書や診断書を取得するとなると、病院が閉院していたりカルテが廃棄されていたりして、なかなかそれはむずかしくなるのです。

 

また、当時の先生がいないため、日常生活能力の状況を把握できないから記載できないなどの理由で、診断書の記載ができないなんてことが起きかねません。

 

長々と「遡り」の請求について書いていきました。つまりこれは、受診状況等証明書や障害認定日のころの診断書を取れるかどうかという問題でもあります。

 

繰り返しますが、障害年金の請求は早めの対応が必要です。

 

 

 

 

遡及請求のの数を誇示する社労士?

 

「障害年金専門」と謳う社労士事務所のホームページで「遡及請求成功事例 約700万円!」なる記事を見ることがあります。

 

これは果たして、この社労士の手柄なのでしょうか。

 

けっしてそんあことはありません。

 

大げさな言い方をすれば、運がよかっただけです。

 

約700万円遡及できるということは、まず請求者が初診日に厚生年金被保険者であり、障害年金2級以上であることが必要であります。

 

でなければ、遡及額が700万円を超えることはまずありません。障害基礎年金2級で5年遡及請求が成功しても、単身の方なら遡及額はせいぜい400万円程度なのです。また、長期間被保険者であった方、被保険者期間の標準報酬が高い、そして加算対象者(配偶者・子供)が多いなどの諸々の条件が備わってはじめて、高額な遡及額を受給することができるのです。

 

逆に言えば、700万円受給できるということなら、それに向けて努力することは悪いことではないでしょう。

 

たまたま、病気やケガで障害を負い、仕事が思うようにいかず障害年金の請求を進めているのは、けっして後ろめたいことではありません。

 

長期間に渡り会社で高い給与・賞与を貰うために努力し、少なくない年金保険料を納めていた事実は、評価されてしかるべきなのです。

 

 

そう考えると、「遡及請求成功事例 約700万円!」というホームページの文言は、けっして、それを誇示するためではなく、当たり前の権利を行使するべきだというメッセージであるのかもしれません。

 

 

 

 

障害年金の情報はまだまだ浸透していない

 

弊社が障害年金の相談に乗るようになってから、かれこれ10年以上になりますが、この制度を知らない方は、たくさんいます。

 

こちらとしては、すでにいきわたってしまった感もあるのですが、「昨日まで知らなかった」という方はまだまだいるのです。

 

遡及請求は、「成功」ではなく、当たり前の権利を行使しただけに過ぎません。

 

5年以上前にやっていれば何てことのない作業を、遅れてやっているだけだということ。

 

もし、それで遡及できなければ、大きな損失になるでしょう。

 

カルテ保存の時効は5年と定められていることを肝に銘じることです。カルテがなければ、受診状況等証明書や診断書の発行ができないからです。

 

よく、当時の診断書がなくても、遡及できたという事例が書かれたサイトを散見することがありますが、あれはレアなケースでそう簡単にはいかないものと考えていいと思います。

 

「訴訟まで持ち越して権利を勝ち取った」という話もけっこうありますが、訴訟における弁護士費用などの経費は現実的ではありません。

 

なので、障害年金のことで少しでも、悩んだら、近場の社会保険労務士などに相談することは悪くないでしょう。

 

どんなことでもかまわないので、「無料相談」などを謳っている社労士事務所に相談してみてはいかがでしょう!

 

ひとりで悩んでいないで、とにかく相談してみましょう。

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