中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。札幌市厚別区厚別中央を拠点に、10年以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10-102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。障害年金の無料相談、随時受け付けております。
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うつ病を伴うてんかん患者さんからの障害年金請求の相談
てんかんとうつ病を併発している方の相談を受けることはよくあります。
昨年、相談・依頼を受け、幣社で請求したケースをここに紹介いたします。
札幌市内にお住いの米山雄二さん(30代・仮名)は、2年前何の前触れもなくてんかん発作に襲われます。治療を行うも症状は改善せず、意識を失うような発作は年に何度か訪れ日常生活に支障をきたすようになります。そして勤めていた会社を辞めてしまいました。
その流れで、幣社に障害年金請求代行を依頼。筆者が請求の作業を進めるようになったのですが、色々調べているうちに米山さんはてんかんを発症する2年前にうつ病を発症し、心療内科を受診していることがわかります。
うつ病に関しては、それほど重症ではないそうで、病院へ行ったり行かなかったりのようでした。現在は、B医院(心療内科を併設する脳神経内科)で、てんかんの治療のかたわら、薬物治療など、うつ病の治療も行っているということです。
先日もこのサイトで書きましたが、同じ精神の障害でも「てんかんとうつ病」など、複数の傷病が併発している場合、請求は少しややこしくなるでしょう。
うつ病とてんかんに因果関係はあるのかを確認する必要があります
こういった場合、うつ病とてんかんに因果関係があるか確認する必要があります。筆者が、B医院(米山さんがてんかんとうつ病の療法の治療を受けている病院)の担当医に確認したところ、「うつ病とてんかんには因果関係なし」とのことでした。
要するに、同じ精神の障害の中に、「うつ病」と「てんかん」という全く違う病気が2つ介在しているということになります。
こういう時は、初診日がいつになるかなど、どのように請求してよいのか悩んでしまいがちですね。
2つの傷病について、簡単な病歴などを記しておきます。
うつ病における初診日 :平成28年6月2日、A精神科
初診日の年金制度 :国民年金(納付要件あり)
通院状況等 :A精神科へ通院していた(体調のいい時は通院していない時もあった)
現在の病院 :B医院(心療内科を併設している神経内科)
現在の病状 :症状はあるが軽快しつつある。障害年金の対象になるほどでもない。
てんかんにおける初診日:平成30年8月4日、C大学病院・救急センター
初診日の年金制度 :厚生年金(納付要件あり)
通院状況等 :C大学病院・救急センターを退院後、B医院・神経内科に転院
現在の病院 :B医院を継続受診・薬物治療
現在の病状 :年に数回意識を失う発作が起きた
B医院の担当医の見解では、「現在は症状は出ているものの、うつ病は少し軽快しつつあり、障害年金の対象になるほどでもない。日常生活能力の低下の原因として、てんかんのほうが多くの比重を占めている」とのことでした。
また、「うつ病とてんかんの治療を受けているのだから、『てんかん』だけの診断書を書くことはできず、診断書の傷病名は『てんかん・うつ病』と書かざるを得ない」とも言われました。
「てんかんとうつ病は因果関係がない」
「現在は症状は出ているものの、うつ病は少し軽快しつつあり、障害年金の対象になるほどでもない」
「うつ病とてんかんの治療を受けているのだから、『てんかん』だけの診断書を書くことはできず、診断書の傷病名は『てんかん・うつ病』と書かざるを得ない」
これらの担当医の発言を総合的に判断し、うつ病とてんかんの「はじめて2級」で請求することにしました。
「はじめて2級」は、納付要件は初診日の後のほうで見ますので、この場合てんかんの初診日で「納付要件」を判断します。
てんかんの初診日は、米山さんが厚生年金の被保険者の時ですので、障害厚生年金の請求となります。
診断書は精神の障害用1枚。傷病名は「てんかん・うつ病」で提出。これらの症状を総合的に勘案していただき2級に認めてもらうのです。
診断書「日常生活能力の判定」7項目の平均点は、約2.428。日常生活の程度は(3)。2級になるかの微妙なスコアだったのですが、結論として障害厚生年金2級が支給できることになりました。
このように、2つ以上の傷病が併発している場合は、色々と考えることがあります。お客様に不利益が出ないよう、じっくりと考えて年金支給につなげていかなければなりませんね。