執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
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筋強直性ジストロフィーと糖尿病
以前、筋強直性ジストロフィーの患者さんの障害厚生年金を請求したことがあります。その方は元々、糖尿病の治療を行っていたのですが、その後、握力のの著しい低下・違和感などを覚え検査したところ「筋強直性筋ジストロフィー」であることが判明。ある程度進行したところで障害年金の請求をこころみることになりました。
当初、通院している医療機関の相談室主導で請求の準備を進めていたのですが、作業を進めている段階で、申立書の書き方がわからないなどの理由から、筆者が参加することとなりました。
主治医が指示した「初診日」は、糖尿病の治療が始まった日でした。筆者も知らなったのですが、その先生によれば、筋強直性ジストロフィーの症状は『骨格筋障害のみならず、心伝導障害、白内障、糖尿病、前頭部脱毛、中枢神経症状(病識の欠如、性格変化、知識低下)など多彩な臨床症状を示す多臓器障害性の遺伝性疾患である。』ということらしいのです。
筋強直性ジストロフィーの専門医が言われることなので間違いないでしょうし、筆者も安心して請求の作業を進めて行けると確信しました。
しかし・・・。
筋強直性ジストロフィーと糖尿病の因果関係が認められなかった
そして満を持して裁定請求したのですが、なんと「筋強直性ジストロフィーと糖尿病に因果関係は認められない」という理由で不支給に着地したのです。専門医が自信を持って指示した「初診日」なのに、認められないという結果にたどりついたのです。
その請求者の「納付要件」があるのは、糖尿病の治療開始時の頃だけでした。だから、そこをなんとか「初診日」に認めさせなければならない。当然審査請求を行います。
『筋強直性ジストロフィーは骨格筋障害のみならず、糖尿病などの多彩な症状を示す多臓器障害性の遺伝性疾患である。本件も糖尿病の症状が出現した時点で骨格筋障害も存在していたと考えられる。』といった内容の意見書を主治医に書いていただきました。
しかし、その甲斐むなしく審査請求の結果も「棄却」。
現在(再)審査請求の準備をしているところであります。
「糖尿病は筋強直性ジストロフィーの症状のひとつ・・・」
それにしてもひどい話であす。
その道の専門医でもある主治医が、「糖尿病は筋強直性ジストロフィーの症状のひとつ」とはっきり言っているのです。それでも審査請求では全く相手にもされない。
その主治医は言いました。
「これは教科書的な話であり、けっして珍しいケースではない。」と。
現在、再審査請求に向けて準備中であります。請求人は非常に困窮しており、障害年金の受給は必要不可欠なのです。
学会での「教科書的な話」が伝わらないのならば、それをどう伝えていけばいいのか。今後の課題はとてつもなく大きいです。
<後日談> この後審査請求を行いましたが、結論から述べて「棄却」でした。「筋強直性ジストロフィーと糖尿病に因果関係は認められない」という解釈を変えることはできなかったのです。そのことをお世話になった先生に報告に行ったのですが、先生は以下のようなお話をされたのが印象に残っています。
『実際のところ、どんな病気でも100%の因果関係を証明することは無理なんですね。専門の領域ではいかにも「教科書的なはなし」といっても、専門外の医師にそれを伝えるのは、なかなか難しいものなんですよ』