執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。大学卒業後民間企業を経て、社会保険労務士になる。15年間障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
障害年金の無料相談、随時受け付けております。まずはお電話を!(011)893-8395までお待ちしております。メールでもOKです。
年金機構理事長「23年度に比べて不支給となった人の割合が高いことが分かった半面、なぜ増えたかについては明確にならなかった。」
札幌市厚別区で社会保険労務士を運営している中斉と申します。障害年金の請求代理業務・(再)審査請求などを手掛けて16年目になります。
さて、障害年金のが2024年度の「障害年金の不支給判定が2024年度に増加した問題」。
あれはいったい何だったのでしょうか。
福祉新聞の令和6年6月29日のWEB記事で、「「さかのぼって支給する」 障害年金不支給問題で機構理事長が答弁」という記事が出ていたので考察したいと思います。
同記事を添付しておきますので、興味のある方はご覧ください。「さかのぼって支給する」 障害年金不支給問題で機構理事長が答弁 – 福祉新聞Web
同記事から一部引用します。
障害年金の不支給判定が2024年度に増加した問題で、日本年金機構の大竹和彦理事長は6月17日、本来支給されるべき人が不支給と判定されていた場合、その判定の時にさかのぼって年金を支給すると明言した。同日の参議院厚生労働委員会で、石橋通宏氏(立憲民主)に答えた。
令和7年6月17日、日本年金機構の大竹理事長は、同問題に対し「本来支給されるべき人が不支給と判定された場合、その判定の時にさかのぼって年金を支給する」と明言しています。要は、2024年度の障害年金で不支給になった案件を改めて審査し、それが認められれば、請求した日などに遡って支給するということなのでしょう。
しっかりやっていただきたいと思います。
しかし、これはたいへん良いことと思いつつも、同記事にもあるように「23年度に比べて不支給となった人の割合が高いことが分かった半面、なぜ増えたかについては明確にならなかった」のであれば、まずそこをしっかり追及すべきだと考えます。
明確な理由はわからないけど、2024年度は不支給率が前年の2倍だとか騒がれているから、同年の不支給案件を「再判定します」っていうのは、テキトーなはなしすぎませんか。
といいますか、昨年度の審査はいい加減に行ったことを認めたのも同然です。
もし、正しい仕事をしていたのなら、「2024年度はたまたま不支給率が高かっただけで、適切な審査をした結果ですから問題ありません」という回答だってありだと思いますよ。
それを簡単に覆すということは、端からいいかげんな仕事をしていたと思わずにはいられません。
2024年度の問題に落とし込むのは危険です!!!
この問題が報じられた当初(令和7年3月13日)、障害年金のセンター長の人事異動で現センター長が就任して以来、このような傾向になってしまったと内部からの告発がありあした。センター長が認定医を誘導していたんではないかと。そして、不支給率増加の大きな要因のではないかと報道されたのです。
さて、この件に関してはどうだったのでしょうか。
今回の問題に対する「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」を引用します。同報告書を貼り付けておきますので、興味のある方はご覧になってください。001502249.pdf
同報告書・6ページ「2.組織的な指示や対応があったかどうか」の欄には、「日本年金機構理事長や障害年金センター長を含め、特定の職員が、審査を厳しくすべきといった指示を行っていた等の事実は、ヒアリングでは確認できなかった。」とまとめられています。
仮にそうなら、なぜ、こんな結果になってしまったのか。繰り返しますが厳重に調査すべきです。
このように大きな問題となったことで、もらえなかった障害年金がもらえるようになるということは、たいへん良いことです。ですが、この問題を「2024年度」のはなしに落とし込むのは大変危険であると考えます。
筆者は、障害年金を取り扱って16年目になりますが、過去に、どう考えても支給されてしかるべきものが「不支給」になったことなど多数あります。いいかげん(と思われる)審査は、2024年度に限らず、いつの時代もあったのです。
また、「不支給」ばかりが騒がれていますが、不当に低い障害等級(明らかに2級と思われるものが3級だったなど)問題も深堀すればまだまだ出てくるような気がするのです。そういったことも含め、過去5年程度遡って再判定してもらいたいものです。
また、同新聞WEB、令和7年6月24日の配信記事「厳格化指示確認できず 障害年金不支給判定急増で調査〈厚労省〉」も一部引用します。厳格化指示確認できず 障害年金不支給判定急増で調査〈厚労省〉 – 福祉新聞Web
厚労省は今後、より客観的で公平な審査を行うため、すべての不支給となったケースについて複数の認定医が審査する。精神障害については過去の不支給が適切だったか点検し、センター職員が作成する事前確認票にある障害等級案の記載は無くす。また、審査書類に判断理由が明確に記載されておらず申請者に分かりにくいため、より丁寧に記載するよう徹底する。
厚労省は、今回の問題を受け、障害年金の認定において、いろいろと対策を練っていくことを名言していますが、これが一時のものにならぬよう、しっかりとやっていただくことを願っております。