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障害年金請求における 社会的治癒とはなんでしょう

 

執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)

 

札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10-102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。

障害年金の無料相談、随時受け付けております。まずはお電話を!(011)893-8395までお待ちしております。メールでもOKです。

 

 

 

 

障害年金 社会的治癒について考えてみましょう

 

札幌市厚別区で社会保険労務士事務所を運営している中斉と申します。

 

障害年金の請求において、「初診日」の確定は非常に重要なポイントです。

 

納付要件はもとより、厚生年金か国民年金などどの制度に加入していたかで、受給金額が大きく異なってくるのです。

 

初診日は、請求傷病において、実際に医師または歯科医師の診療を受けた日のことをいうのですが、請求者自身がコントロールすることができないなど一筋縄ではいかず、その候補にあげられるものは複数にわたるケースもあります。

 

初診日について掘り下げていくと、「社会的治癒」という概念にたどりつくでしょう。

 

社会的治癒について書かれた優れた書籍に「裁決例による社会保険法 - 国民年金・厚生年金・健康保険 -著:加茂紀久男」がございます。一部引用させていただきます。

 

いわゆる「社会的治癒」が認められる場合には、社会的治癒の状態が存在した後、最初に医師にかかった日が初診日となる。社会的治癒とは、傷病が、医学的な意味では治癒したとはいえないが、その症状が消滅して社会復帰が可能となり、かつ、治療投薬を要せず、外見上治癒したと見えるような状態がある程度の期間にわたって継続することであり、保険給付はこれを治癒に準じて扱うことが承認されている。もっとも、治療投薬については、全くこれをしない状態であることは必ずしも必要ではなく、維持的・経過観察的な治療が継続していても社会的治癒の成立を妨げないとされている。社会的治癒と認めるのに必要な寛解期間の長さは、傷病の性質によって異なり(たとえば癌の手術をしたような場合や精神病の場合には、ある程度長めな寛解期間が必要とされる傾向にある)

 

例えば、大学在学中の19歳の頃に精神疾患を患い、精神科に2年ほど通院していたものの寛解し、就職先では約10年間継続して活躍していた方がいたとしましょう。

 

しかし、32歳の時、残念ながら精神疾患をぶり返してしまった。そのような方が障害年金を請求する場合、その初診日はいつになるのでしょうか。

 

当然この場合、初診日は19歳の頃精神科を受診した日と考えるのが通例でしょう。ということは「20歳前障害」ということになり、障害基礎年金の対象になってしまいます。

 

しかし、大学通学中の2年間精神科に通院し寛解。その後大学を卒業して約10年間順調に会社員生活を送った実積は一定の評価を受けて然るべきです。

 

たとえ32歳に病気が再発し、再び精神科を受診したとしても、大学卒業後~再度精神科を受診するまでの寛解していた約10年間は、まさに「社会的治癒」の期間なのです。

 

そうなると、再度精神科を受診した32歳の会社員の頃が初診日とみなされ、障害厚生年金の対象として請求することができます。

 

となれば、障害基礎年金の時と比べ、2級の場合金額はかなり上回ります。また、障害厚生年金は3級もあるので、年金受給のハードルがかなり低くなります。

 

 

 

 

どうしたら社会的治癒が認められるのか?

 

では、社会的治癒と認められるためには、どういったものが必要なのでしょう?

 

簡単に言えば以下のものが必要です。(一例です)

 

①継続し、安定した就労期間(厚生年金に加入している期間が、継続して最低でも5年〜8年くらい必要です。)

 

②日常生活を健常者と同様に送っていたことが証明され書類(物証)。

※同僚の第三者証明書・スポーツクラブの加入期間を証明できるもの・趣味のサークル活動を継続して行っていたことを証明できるものなど(写真なども有効です)

 

例えば、上記のものを集めて請求書に添付し、請求するのです。もちろん、別紙にて、「社会的治癒」を申し立てることも必要になってくるでしょう。

 

これらは、初めて請求する方には非常に難しいものと思われます。これこそ、障害年金に詳しい社会保険労務士等に相談・依頼することをお勧めいたします。

 

しかし、障害年金受給のハードルが上がるとともに、並行して社会的治癒認定も厳しくなっている。

 

ほんの数年前には認められたであろうケースが、「不支給」になっていたりする。

 

これが、最近の障害年金の現実です。もちろん不服申し立てをしますが、社会保険審査官も審査会も、社会的治癒に対してもかなり厳しいです。

 

例えば、社会的治癒期間は「最低でも10年は必要」と言っていた厚生労働省・年金局の職員もいました。まあ、その件に関しては、おいおい場面を変えて話していきたいと考えております。

 

しかし、会社員として一定期間仕事を全うし、税金を払い、社会保険を納付し、日常生活も健常者と変わらぬほど普通にこなしてきた実積を認めないというのは、言語道断であります。

 

「社会的治癒」。みんなで考えていきたいと思います。

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