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知的障害の障害年金 認定日の診断書なしも遡及請求が認められた 札幌地裁

執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)

 

札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。

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知的障害の障害年金 認定日の診断書なしも遡及請求が認められた(札幌地裁)

 

社会保険労務士の中斉徳久と申します。札幌市厚別区で障害年金の請求代理業務・(再)審査請求などを主に行っております。

 

さて、先日、知的障害の障害年金で、障害認定日当時の診断書を添付できなかったものの、遡及請求が裁判で認められたという記事(ヤフーニュース、7月2日)を見ました。

 

すばらしいニュースだったので、皆さまにお知らせしたいと思い投稿させていただきます。

 

事件の概要としては、30代男性が、知的障害で障害年金を遡及請求。しかし、障害認定日当時(20歳到達時)の診断書を取得できなかったとして、日本年金機構・厚生労働省は却下します。しかし、その結果に納得できず、国に処分を取り消すよう訴訟を起こし、札幌地裁は取り消しを命じたというものです。当該事件についてはヤフーニュースの記事に詳しいので、興味のある方はぜひご覧ください。https://news.yahoo.co.jp/articles/91405750894aa670ffcefa7b5df57f099deb3321

 

 

もう少し整理してお伝えします。

 

北海道在住の30代男性。知的障害で障害年金の遡及請求をするも、障害認定日(20歳到達時)の診断書を取得できず、却下されました。ここまではそれほど珍しいことではありません。ほとんどの人は、そこであきらめるものです。障害年金の請求において、原則的に、障害認定日頃の診断書は必須だからです。

 

知的障害の方が障害年金を請求するタイミングとしては、20歳到達時に行う方がほとんどでしょう。しかし、中には、サポートする方が近くにおらず、気が付けば30代、40代になってしまったという方は少なからずいらっしゃいます。こういった場合、遅れて遡及請求を試みるものの、時間が経ちすぎていてカルテなどがないため障害認定日当時の診断書が取れず、「医師による診断書などの客観的な資料がない」として、遡及請求にかんしては却下されるのです。

 

しかし、この男性はあきらめませんでした。「受給が可能になる20歳時点で受給資格があったことの裁定請求を却下されたのは不当」として、(再)審査請求など経たのち、国の処分を取り消すよう訴訟を起こしたのです。結論として、札幌地裁は取り消しを命じました。

 

これは、すごいことです。

 

同記事には「布施雄士裁判長は判決理由で、男性が10代だった2003年、療育手帳の交付を受けていたほか、母親の説明などから、20歳の時点でも、男性に現在と同程度の知的障害があったと認められると判断した。」とあります。

 

全くその通りだと思います。10代の頃に療育手帳の交付を受けている。これこそじゅうぶんに「客観的な資料」です。知的障害と認められ療育手帳を取得された方であれば、多少の日常生活能力の向上は認められたとしても、現実的に劇的な変化は考え難い。一般的な社会生活や単身での日常生活はむずかしいものとなるでしょう。となると年金を受給する資格はじゅうぶんあるはずです。裁判官であらずともそう考えるでしょう。また、診断書ならずとも療育手帳以外にも客観的な資料など、いくらでもあるはずです。「養護高等学校時代の先生の証言」、「近所の方の証言」、「福祉施設の職員の証言」、「福祉サービス利用の際に必要な医師の診断書のコピー」、そういった参考資料だけでも、請求者の20歳当時の状態を示すことはじゅうぶんできると思います。今回の裁判の結果は、そのような多くの資料を色々と提出した上で勝ち取ったものなのでしょう。

 

 

 

 

今後、障害認定日の診断書がなくても知的障害で遡及請求できるようになるのか?

 

さて、今回の判決を受けて、今後、知的障害の遡及請求は、認定日当時の診断書がなくても認められるでしょうか。

 

これは、あくまで筆者の「感想」ですが、たぶんそう簡単には認められないと思います。今回の事件で仮に国は控訴せず、判決が確定したとしても、年金機構・厚生労働省の解釈はそう変わらないと考えます。

 

実は、私の知る範囲でも過去にも同じような判例はあったと思います。10年くらい前でしょうか。今後への大きな一歩だと、みんなで歓喜の声をあげたものの、大きな流れを変えることはできなかったのです。今回の事件で仮に国は控訴せず、判決が確定したとしても、年金機構・厚生労働省の解釈はそう変わらないと考えます。

 

これは、裁判にまで及んだ「一事案にすぎない」ということで、原則的に「診断書なきものは認めない」という解釈は続くような気がします。

 

しかし、あきらめずに声をあげていくことは大事だと思います。現実的に裁判をするということのハードルは高く、国を訴える人はなかなかいないと思いますが、世論を動かすことで国の解釈が大きく変わっていく可能性はゼロではないと考えます。

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