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高次脳機能障害(交通事故)と躁うつ病の因果関係

執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)

札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。

障害年金の無料相談、随時受け付けております。まずはお電話を!(011)893-8395までお待ちしております。メールでもOKです。

 

 

 

 

交通事故の後遺症で高次脳機能障害に

札幌市厚別区で社会保険労務士をやっている、中斉と申します。障害年金の請求代理業務・(再)審査請求などを主に行っております。

 

精神の障害年金を請求する上で案外難しいと思われるのは、「高次脳機能障害」と「躁うつ病」、「うつ病」と「てんかん」といったように、1通の診断書の中に2つの傷病が入り混じっているケースではないでしょうか。それらの傷病同士で因果関係があるかないかでずいぶんと請求の仕方も変わってくるものです。今回は過去の事例をあげて、そのへんのところを色々考えていきたいと思います。

 

依頼者:Iさん(30代前半女性)。傷病名:「高次脳機能障害(交通事故)・躁うつ病」。

 

約10年前大学4年生の頃。Iさんは大学の友人とドライブ旅行に行きます。そこで自身が運転するクルマで交通事故を起こし救急搬送されたのです。幸い友人の怪我は軽かったものの、Iさんは数カ月入院するはめに。リハビリを行い身体に異状は残らなかったのですが、軽い高次脳機能障害の症状が残り言葉がうまく出てこないなど生活に一部支障がでてきます。

 

その後、実家で簡単なアルバイトをしながらひっそり暮らしていました。高次脳機能障害に関してはそれほど改善はせず、うまく言葉が出てこないなどの支障がありましたが、まわりの援助でなんとか生活できていたと思います。

 

そんな生活が約10年年続きました。

 

 

 

 

高次脳機能障害と躁うつ病の因果関係はあるのか?

 

交通事故から約10年経過した頃でしょうか。症状にあきらかな異変が感じられるようになります。Iさんがやたらとキレやすくなったのです。

 

些細なことで家族に当たり散らし、コンビニやスーパーの店員と揉め、テレビ番組の内容に異常ほど怒りをぶつけてみたり・・・。

 

かと思えば、何日もふさぎこんだりする。また、気持ちがのれば食事も摂らず10時間以上平気でゲームを続けたりする。そんな姿を目の当たりにした家族は心配し、通院する脳神経内科の病院の先生にに相談します。

 

「躁うつ病の疑い」

 

脳神経内科の担当医からそう言われ、すぐに精神科を紹介受診。やはり、そこでも診断名は「躁うつ病」でした。

 

躁うつ病の疑いと言われ1年半経過した頃、あまり症状が改善しないのを心配し家族ははじめて障害年金の請求を検討します。

 

さあ、こういった場合、初診日はいつになるのでしょうか。請求者とそのご家族は、「初診日」をどう求めればいいかわからず、弊社に相談に来られたというわけですが、こういったケースは簡単なようで案外悩むものなのです。

 

高次脳機能障害と躁うつ病の因果関係があるかないかが重要なのですが、これはそう簡単に割り出せるものではないでしょう。

 

筆者は、現在通院する精神科の先生に話をうかがいに参りました。

 

 

 

 

医師の見解 「高次脳機能障害と双極性障害の因果関係は不明」

 

精神科の担当医としての見解は、「高次脳機能障害と躁うつ病の因果関係は不明」でした。いや、正確にいえば話はもっと複雑なもので、「何らかの因果関係はあると思います。しかし、こういったケースで因果関係を立証することは、我々専門家といえども難しいものなのです。」といったお話をされたと思います。

 

筆者としても、ある程度予想できた回答でした。なぜなら、たいていの医師は同じような回答をされるからです。因果関係を立証するというのは難しいということなのでしょう。

 

 

幸い、Iさんは高次脳機能障害の原因となる交通事故にあった頃も、躁うつ病を診断された頃においても免除申請を行っていたので、どっちに転んでも納付要件に問題ありません。結論から述べますが、当初「はじめて2級」の請求を行ったものの、審査の途中で年金機構の判断により、「診断書の内容において高次脳機能障害の症状はあまり出ていない。躁うつ病単独でのものと考える」ということに着地しました。

 

無事、障害基礎年金2級がきまり、終わってしまえば何てことはない請求だったのですが、このように、精神の障害で2つ以上傷病があり「因果関係」があるかないかを求められるケースは案外むずかしいものなのです。

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