執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。大学卒業後民間企業を経て、社会保険労務士になる。15年間以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
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Q 障害基礎年金を6年前から受給中 障害厚生年金に裁定替えできるのか?
50代後半・男性(Dさん)。
障害基礎年金から障害厚生年金に変更できるのか、という質問です。
私は、6年前に事後重症請求し、うつ病で障害基礎年金2級を受給しております。症状は改善せず今も年金を受給中。
最近、6年前に障害年金を請求した時に申し立てた「初診日」が、今になって間違いであったのではと思い始めたのです。
私の病歴は以下の様です。
1 A〇〇心療内科(初診日:平成22年10月) 傷病名:心臓神経症 (カルテあり)
2 A〇〇心療内科(初診日:平成27年6月) 傷病名:うつ病 (カルテあり)
2 Bメンタルクリニック(初診日:平成29年4月) 傷病名:うつ病 (カルテなし)
3 C病院・精神科(初診日:平成29年6月) 傷病名:うつ病 ( 通院中 )
平成22年10月頃、頻脈や胸痛が続き、循環器内科を受診したものの「異常所見は見当たらない」とのことで、そこの先生から心療内科を紹介されます。「あなたは疲れてるんですよ・・」とのこと。
すぐに、A〇〇心療内科を受診。ついた診断名は「心臓神経症」でした。安定剤を処方され、1回通院するのですがそれ以来行かなくなりました。この時は自営業をしておりました。
そして、その5年後の平成27年6月頃、再びA〇〇心療内科を訪れる時がきます。実は、その2年ほど前から自営業を廃業し就職していたのですが、上司のパワハラが原因で抑うつ状態が激しくなり、同病院を受診することになるのです。受診の際、今度は「うつ病」と言われました。この時は、サラリーマンですので、もちろん厚生年金の対象になります。
次の病院の受診は平成29年4月、Bメンタルクリニックです。転居によりA〇〇心療内科へ通院するのが難しくなり、近場のBメンタルクリニックへ通院することになりましたが、主治医とあわずすぐに受診を打ち切りました。
そして、平成29年6月からC病院・精神科に転院し今に至ります。ちなみに障害基礎年金の事後重症請求をする際、診断書をもらったのはこの病院です。
6年前、障害年金を請求した時は、何も考えず、13年前にA〇〇クリニックを受診した日を「初診日」として申し立てましたが、今考えてみればそれは間違いで、「心臓神経症」で受診した日から5年経って再びA〇〇心療内科を受診し、「うつ病」と言われた日が本当の意味で初診日ではないかということです。
つまり、心臓神経症は、うつ病とは何ら因果関係はなく、心臓神経症の診断から5年後にA〇〇心療内科を受診した日が本来の初診日だったと思うのです。
よって、障害厚生年金を請求できるのではないかということです。
私は、障害厚生年金を請求し、受給することはできるのでしょうか。
A 障害厚生年金に裁定替えを求めて請求できるが、多額の返納を求められることも
札幌市厚別区で社会保険労務士を運営している中斉と申します。障害年金の請求代理業務・(再)審査請求などを手掛けて16年目になります。
6年間受給している障害基礎年金を障害高清年金に変更できないか?
つまり、裁定替えの問題ですね。
初診日の間違いに気づき、現在受給中である障害基礎年金から障害厚生年金に「裁定替え」を求めて請求することは可能です。認められれば、障害厚生年金の受給権者として受給することも可能ですが、そこには色々と困難なことがつきまとうということもご理解されたほうがいいと思います。
請求の仕方としては、障害基礎年金の時と同様、新たに障害厚生年金を請求することになります。
やり方としては、至ってシンプルです。要は、改めて障害厚生年金を請求するだけです。
受診状況等証明書を取得(平成27年6月、再びA〇〇心療中を受診しうつ病と言われた日を初診日とします)、現在の診断書(認定日請求が可能でしたら、認定日請求の診断書)も取得し、病歴・就労状況等証明書をしっかり書いて請求し認められば、障害厚生年金を受給することができます。
そして、障害認定日請求が認められれば5年間遡って請求されます。
しかし、この場合初診日が10年前ということになれば、そこから1年半後はBメンタルクリニックへ通院中の時期です。すでにカルテがないとのことですので、障害認定日の診断書は取得不可能です。
つまり、事後重症で請求することになります。ご存じかと思いますが、事後重症請求なら認められたとしても、支給は翌月からとなります。
そして、障害基礎年金から障害厚生年金に裁定替えしたとなれば、障害基礎年金は「取り下げ」ということになり、5年間受給した金額をすべて返納することになります。Dさんの家族構成が書かれていないので詳しくはわかりませんが、単身だとしても、約400万円のお金を返納しなければならないのです。
障害厚生年金で、金額が上がったとしても、いきなり400万円の「借金」を背負うのであれば、それはちょっとリスクがでかすぎではないでしょうか。
Dさんは、50代後半ということは、あと10年ちょっとで老齢厚生年金の受給権が発生しますので、障害厚生年金にこだわることはないのではないのでは?
もちろん、それでもやりたいというのであれば、それは権利ですので挑戦するのはありです。
ですが、仮に元は取れたとしても、それほどメリットは感じられませんので、私ならあまりお勧めいたしませんね。