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「障害年金、相次ぎ不支給「眼球使用困難症候群」の患者(共同通信)」を考察する

 

執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)

 

札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10-102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。

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「眼球使用困難症候群」 国の解釈に難あり 指摘され 「誤りを認める」

 

札幌市厚別区で社会保険労務士事務所を運営している中斉と申します。障害年金の請求代理業務・(再)審査請求などを主に行っております。

 

障害年金・眼の障害、「眼球使用困難症候群」における国の解釈について、動きがありました。10月12日のヤフーニュースの記事(共同通信)を引用させていただきます。

障害年金、相次ぎ不支給 「眼球使用困難症候群」の患者(共同通信) – Yahoo!ニュース

 

神経の異常でまぶたの開閉が自由にできなくなったり、極度のまぶしさで目が開けられなくなったりする「眼球使用困難症候群」の患者が昨年以降、障害年金を相次ぎ不支給とされていたことが12日、社会保険労務士や医師への取材で分かった。判明した範囲では、受給していた人の70%が支給停止となり、新規の申請でも認められない例が続いていた。

 

厚労省は共同通信の指摘を受け、「取り扱いにばらつきがあった」と事実上、判定の誤りを認め、審査を担う日本年金機構に対応を改めるよう10日付で通知。「(不支給となった)過去の事案については再審査する」としている。

 

眼瞼けいれんなど「眼球使用困難症候群」は、非常にたいへんな病気なのですが、障害年金の世界では軽く扱われがちです。

 

障害認定基準(眼の障害)には、以下の記載がありますが、一部引用させいただきます。

3-1-1.pdf (nenkin.go.jp)

 

障害手当金 「両眼の調節機能及び輻輳機能に著しい障害を残すもの」

 

つまり、認定基準では、障害年金3級にも満たない障害手当金にしか該当しないということです。

 

ニュース記事にある『「眼球使用困難症候群」で、受給していた人の70%が支給停止となり』というのは、症状的には障害手当金に該当するが「症状が未固定」という理由で障害年金3級を受給していた(いわゆる3級14号)人が、何年かに一度ある更新で「症状固定」になったことを理由に、支給停止になったということだと思われます。

 

 

 

 

「目を開けることが困難になるケース」で障害年金がもらえない?

そもそも、この傷病の障害等級を一律に考えるのには、無理があります。重症例では、「目を開けることが困難になるケース」もあると言われているのです。症状によっては2級以上に認定するなどの配慮も必要でしょう。

 

障害認定基準における眼瞼けいれんなど「眼球使用困難症候群」は、障害基礎年金の対象にすらなっていないというのはおかしな話です。

 

障害認定基準/障害認定に当たっての基本的事項には、以下の記載があるので一部引用します。

2.pdf (nenkin.go.jp)

 

1 障害の程度
障害の程度を認定する場合の基準となるものは、国年令別表、厚年令別表第 1 及び厚年令別表第 2 に規定されているところであるが、その障害の状態の基本は、次のとおりである。
(1) 1 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。
(2) 2 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。

 

(2)2級の箇所には日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとすることが基本的な考え方であると明記されています。

 

「目を開けることが困難になるケース」なら、「常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」にじゅうぶん該当するはずです。それが端から対象になっていない。

 

非情におかしな話です。

 

そのおかしさを、国が認められたというのが、今回の記事で明らかになりました。

 

共同通信の指摘を受け、厚労省は「取扱いにばらつきがあった」と認め、そして、年金機構に対応を改めるよう通知を出しています。

 

「(不支給となった)過去の事案については再審査する」と回答していることから、今後の改善が大いに期待されます。

 

これは大きな一歩です。

 

障害年金に携わり、かれこれ15年になる筆者ですが、その認定における「おかしさ」を感じる場面を数限りなく見てきました。いわゆる「矛盾」がいたるところにあるのです。

 

我々のような現場にいる者達が、悪いところはすこしでも改善され、障害をもった方にとって少しでも有利に働くように、今後も声をあげ続ける必要があると考える今日この頃です。

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