執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。10年以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10-102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
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初診日 強直性筋ジストロフィーと糖尿病の因果関係
札幌市厚別区で社会保険労務士事務所を運営している中斉と申します。障害年金の請求代理業務・(再)審査請求などを主に行っております。
障害年金を請求するにおいて、初診日はとても大事だということは、みなさんもよくご理解されていると思います。
例えばうつ病における請求。体調に異変を感じ、すぐに精神科を受診したケースなら、概ねそこが初診日と解釈できるでしょう。
とはいえ、一筋縄でいかないケースも山ほどあります。
例えば、いわゆる難病と言われる傷病の場合などは、診断名が確定するまでいくつもの病院を渡り歩くことがたいはんです。ですので、なかなか初診日を確定できなかったりします。「どこが初診日なのかわからない・・・」というかんじですかね。
弊社にもこのような「初診日はいつか?」といったご相談はしょっちゅうあります。
そこで、よくある質問として、「現在の主治医にどこが(いつが)初診日か確認すればいいのでしようか?」というものがあります。
もちろんそれもありでしょう。専門医なら、どういった症状がこの傷病の特徴などとすぐに判断できるからです。なので、その先生が「ここが初診日ではないでしょうか」といったところが、初診日であることはおおむね正しいと思います。
しかし、その判断が年金機構で認められるのかといえば、そううまくいかないところが、障害年金の難しいところです。
以前弊社の扱った事例をもとに、ご説明させていただきます。
その業界(専門医)で当たり前のことが、通じないこともある
これは、数年前に受任した案件です。
30代後半男性。傷病名は「強直性筋ジストロフィー」でした。進行具合としては、まだそれほどでもなくご自身で歩ける状態で一般就労は困難なものの、日常生活はなんとか自力でこなせる程度だったとおもいます。しかし、握力が極端に落ち、両手とも「1~2」程度でしたので、障害厚生年金3級相当かなと思っていました。
実は、ご相談を受けた当初、それほど難しくない案件だと高を括っていたのです。といいますのも、そもそもその障害年金は担当の先生はじめ、病院がすべて段取りをしていたものだったからです。
初めての面談は、通院する病院の「相談室」。ソーシャルワーカー同伴で行いました。すでに受診状況等証明書ができあがっていて、「あとは診断書ができあがるのを待つだけです」と相談員から言われ、請求代理業務を引き継ぎました。数日後に診断書ができあがり、病院からいただいた情報をもとに申立書を作成し、請求はあっという間に終了しました。その間約2週間です。正直「楽」な作業だったなとおもったものでした。
その時までは・・・。
請求し、2か月後くらいに年金機構から通知があり書類一式返戻されました。それは「初診日が違う」というものでした。請求の際に提出した受診状況等証明書の初診日はそれに当たらないと。「〇年〇月〇日に、〇〇病院(現在通院する病院)を受診した日が初診日である」といった趣旨のものでした。その依頼者は、〇〇病院を受診した日は仕事を辞めていて、国民年金の対象、つまり2級以上しかもらえない方です。現在の症状からして2級はとても無理ですので、最初に設定した初診日(厚生年金)にこだわる必要があったのです。
実は、その受診状況等証明書の傷病名は「糖尿病」でした。
会社の健康診断で「血糖値が高い」と指摘を受け、糖尿病の専門医で治療がはじまったのです。この時はまだ「筋ジストロフィー」の診断名はついておらず、ただ糖尿病の治療を行っていただけです。ご存じない方に説明しますと、「強直性筋ジストロフィー」の症状のひとつとして「糖尿病」があるというのです。つまり、強直性筋ジストロフィーと診断はされていないものの、糖尿病の症状が出て始めた時、すでに筋ジストロフィーがはじまっていたと。これは、担当の先生が言っていました。
そして「我々(神経内科)の業界では、教科書的なはなしなんですけどね・・・」とも付けくわえていたのです。
医学的・経験に裏付けられた専門医の意見書も通じない・・・
先生に、その旨「意見書」に記載していただき、初診日は直さず、糖尿病の初診日のまま審査していただけるようお願いし、返戻された書類を再度提出しました。
結論から申し上げて、「強直性筋ジストロフィーと糖尿病の因果関係はない」という結果が出てしまいました。「却下」です。
もちろん、不服申し立てを行います。しかし、審査請求、再審査請求ともにあえなく棄却だったのです。その都度、担当の先生に相談に行き、より詳しい意見書を書いていただきましたが、何一つ認められませんでした。
悔しいです・・・。
先生は、何度も言っていた「我々の業界では、教科書的な話なんですけどね・・・」という言葉が今でも忘れられません。しかし、専門家ではない認定医にそれを伝えることは非常にきびしいことも同時におっしゃっていました。
なので、担当の先生の判断が、障害年金の認定の現場すべて認められるわけではないのです。
要するに「初診日」を判断するのは認定医だということですね。それはわかります。しかし、それでは診断書記載医である主治医をバカにしてはいないだろうかと、率直に思ったりするのです。