障害年金 社労士を毛嫌いする医師 果たして社労士はダメなのか?
執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。大学卒業後民間企業を経て、社会保険労務士になる。15年間障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
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「あいつら(社労士)を使うなら私はいっさい協力しない」ある医師の言葉
札幌市厚別区で社会保険労務士事務所を運営している中斉と申します。障害年金請求代理業務を始めて16年目になります。
さて先日、半年くらい前に「精神の障害年金(うつ病)で請求の代行を依頼したい」という相談を受けていた男性(Xさん)から、久しぶりに電話をいただきました。
Xさん
「前に言っていた障害年金ですが、そちらに依頼しようと思っていたんですが、実は数カ月前に自分で請求していたんです。なんだか申し訳ありません。」
筆者
「まあ、そういうことはよくありますよ。お気にされなくてもけっこうですよ」
Xさん
「私の担当医が社労士さんのことを嫌っていて、「あいつらを使うなら私はいっさい協力しない」と言われたんです。それでそちらに依頼できなかったんです」
「あいつら」とは、つまり我々社労士のことです。つまりその先生は社労士が大嫌い。社労士が請求代理人となり障害年金の診断書を依頼してきたら、ぜったいに書かないということでしょう。
なんだか寂しいですが、最近では見慣れた風景でもあります。
では、なぜ社労士を使ってはだめなのか。Xさんは担当の先生に問いただしたところ、「あいつら(社労士)はお金のことしか考えていないとんでもないやつら。あんなもん(障害年金請求)は誰でもできるものなのにもうけ過ぎている。だから大嫌いだ。」とおっしゃられたとのことです。
障害年金請求代理社労士 → 金の亡者 → 障害年金(誰でもできる簡単な作業)でぼろ儲け → 大嫌い
つまりそういうことでしょうか。
そこで、その病院のソーシャルワーカーさんが年金事務所への同行、申立書の作成などあらゆるサポートをしてくれて、結果、年金が支給されたということです。
いい結果になり、まずは何よりです。
社労士に障害年金を依頼することを全否定 先生、それは少し雑過ぎです。
特に精神の障害においてそうなのですが、このように社労士を嫌う医師は少なくありません。筆者も精神科の医師にそれとなく嫌いな空気を出されたことは何度かあります。いや、罵倒されたこともあったかもしれません。
それにしても、Xさんの担当医の「社労士が嫌い」だから「障害年金を依頼しすることを全否定する」という見解はあまりにも雑すぎるのではないでしょうか。
障害年金の案件は、人それぞれ色んなパターンがあるのです。
今回、ソーシャルワーカーさんが、請求のサポートをして、結果うまくいったことをもって、それを根拠に、障害年金の請求など「だれでもできる」と判断するのは非常に荒い解釈です。
Xさんの病歴は非常にシンプルで、一つしか病院にかかっておらず、初診から数年しか経過していません。症状も顕著です。まさに「誰でもできる」ケースかもしれない。
(金の亡者と言われる)社労士の筆者でさえ、「このケースならご自身でやられても何とかなるのではないでしょうか」とXさんに伝えていたと記憶しております。
しかし、そんなシンプルな案件ばかりではありません。病歴が複雑で20年以上と長期にわたり、10個以上病院が変わっているケース。社会的治癒を申し立てたうえで請求するもの。あるいは、状態が当落線上で申立書のひとつの文言が命取りになるケースだってあるのです。
ひとえに障害年金といっても様々です。
社労士というか、制度を詳しく知る者が代行したほうがうまく行き、あるいはコスパ安いという場合もあることをわかってほしいものです。
社労士に障害年金依頼する「✖」 ソーシャルワーカーがサポートする「〇」 そんな対立構造は危険 共存できるところは共存すべきである
最近は、病院のソーシャルワーカーさんだけではなく、地元の障害者支援センターなどの相談員さんなどが障害年金のサポートを行っているのをよく見かけます。筆者から見れば、それはそれで全然かまわないと思います。
では、我々社労士が出る幕はないのか?
そんなことはないと思います。
幣社へ来られるご相談で、年金不支給における分析を求めるものが少なくありません。
提出書類を拝見したところ、致命的なミスなどを含め明らかに失敗しているケースが散見されます。
「これは誰かの指示なんですか?」と詳しく聞いてみると、それは病院のソーシャルワーカーさんや地元の障がい者支援センターの相談員さんの指示によるものだったりすることが少なくありません。断っておきますが、それらの職員さんの能力が低いということを言っているのではなく、ご自身の仕事のかたわら、専門ではない年金請求のサポートをされる場合、ある程度ミスがおきることは致し方ないものだということです。
そして、法律に依拠する請求において、結果は認定する側のさじ加減でどうにでもなるものです。前回成功したことが、いきなり通用しなくなくなることも茶飯事ですので、最悪の状況を想定し請求作業に携わることを求められます。
また、筆者であれば、数カ月でできるものを2年以上かかり、年金事務所に複数回相談するもけっきょく書類提出にたどりつけなかったというケースもありました。障害基礎年金2級の金額は約80万円だとすると計160万円受給できなかったと考えられるのです。思えばこれは大きな損失です。
当時の関係書類を見てみると、明らかに複雑な案件だったのですが、「社労士に支払うのがもったいない」という発想が逆にコスパの悪い結果に着地してしまったのです。
何故最初からこちらに相談してくれなか。思わずそう言ってしまいそうですが、後悔先に立たずです。
つまり何を言いたいかと言うと、「社労士が金の亡者」、「悪」と位置付けるるのではなく、自分達でできるものは自分達でやり、ちょっと煩雑だな、難解だなと思ったら、とりあえず社労士に相談してみるという構図があってもいいのではないでしょうか。
要は共存関係です。
また、病院のソーシャルワーカーさんに多くを任せると、その責任問題はどうなるのかといった別の問題も出てくるでしょう。いや、責任を取る必要はないですが、逆恨みされるといったリスクは否めません。
どんなにやり方が間違っていなくとも、逆にだれがやっても「不支給」になるものはなるのです。それが障害年金です。
筆者もそうですが、「あいつのせいで不支給になった」と恨まれる可能性もあるのです。
ソーシャルワーカーさんが非常にストレスフルな状況になることだけは防がなくてはなりません。
筆者もそれこそ「誰でもできる」ものは、ご自分でやられるよう進言することは多いです。しかし、より煩雑な、そしてレアなケースなどは、こちらにご相談いただけることをお勧めいたします。
ちょっと長くなりましたね。
このテーマは、シリーズ化し、続きは後日改めて投稿させていただきたいと思います。
お楽しみに!