知的障害の請求 小児科の先生に障害年金の診断書を依頼して不支給になったケース
執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。大学卒業後民間企業を経て、社会保険労務士になる。15年間以上障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
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知的障害の年金請求 小児科の先生に診断書を依頼し「ミス」が起きるケースを分析する
札幌市厚別区で社会保険労務士事務所を運営している中斉と申します。弊社が障害年金請求代理業務を始めて16年目になります。
20歳到達時、知的障害で障害年金を請求して「不支給だった」という方からご相談を受けるケースが年に何度かあります。つまり「不支給の理由を分析してほしい」ということです。
相談者の話をよくよく聞いていると、その理由は様々ですが、先生の診断書記載における「ミス」であることが多いです。
「ミス」とあえてカギカッコで注釈していますが、明らかに実際の症状とかけ離れている診断書ができあがってしまっている(つまり軽く書かれている)ケースがあるのです。
そういった「ミス」がおこりやすい状況として、記載医が小児科の先生のケースが少なくありません。
知的障害の障害年金の場合、かかりつけの小児科の先生が診断書を書くことがよくあるのですが、先生方にはたいへん失礼ですが、注意が必要な場合がございます。
別に小児科の先生を批判するわけではないのですが、小児科の先生は当然子どもさんの診察がほとんどなため、障害年金の診断書を記載する機会が少なく書きなれていないため「ミス」が起きやすいのです。
例えば、患者自身やその保護者からの日常生活の聞き取りを額面通り受けとり、「軽く」書いてしまうなどがそれにあたります。
つまり、請求者側が診察室でついつい見栄を張り、日常生活のあらゆることを「できる」と宣言してしまい、それが診断書に反映してしまったりすることがある。
全てではないですが、ありがちなことです。
当然、はじめて請求する側は、診断書のチェックなどできるはずもなく、右から左に流す感じで提出した結果、「不支給」となってしまう。
診断書の内容が適正なものであるのならあきらめがつきますが、ずいぶん実際とかけ離れてしまっている内容ならちょっと悔いが残りますよね。
小児科の先生のやさしさが仇になる場合も・・・
精神の障害年金は、審査において、実際の症状が全くないがしろにされているとまでは言いませんが、「日常生活能力」がどのような状況かということが大きく問われるものです。
それは、診断書で言うところの「日常生活能力の判定」・「日常生活能力の程度」が、医師にどう評価されているかで判断されます。
そこが、「軽く」書かれていると、不支給になる確率が上がってしまう。
障害年金(精神の障害用)の診断書のデータを貼り付けておきます。04-1.pdf
例えば、裏面左側の「日常生活能力の判定」の(1)「適切な食事-配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど」の欄をみてください。
そこには左から軽い順に「□できる」・「□自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」・「□自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」・「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」と4段階評価になっています。読んでいて気付いた方も多いと思いますが、数値で測れるものではなく、とても抽象的な表現で書かれています。
数値で評価できないため、先生によって評価が大きく変わるなど「属人的」なものになりがりです。
しかし、この評価のちょっとした書き方が年金の当否に大きく左右するので軽く流せるものではないことを肝に銘じるべきです。
ですので、日常生活能力については、保護者の方が、実際のところをしっかり先生にお伝えすることをお勧めします。
気づいていない方が意外に多いのですが、精神の診断書の「2 日常生活能力の判定(該当する者にチェックしてください)」の欄の下には、赤い文字で以下の文言が書かれています。
「判断にあたっては、単身で生活するとしたら可能かどうかで判断してください」
まず、思い浮かべてください。一人暮らしをしている状況を。
今住んでいる実家から引越しの段取りをし、一人暮らしをする。仕事をしながら単身で暮らす姿を思い浮かべてください。
しっかりとシングルライフを維持できるでしょうか。栄養のバランスを考えて食事の準備ができるでしょうか。カップラーメンにお湯を入れて空腹を満たすことは適正な食事とはいわないのです。
そのあたりを、しっかりと押さえ、医師に相談してください。そうすれば「ミス」など起こらないと思います。
また、かかりつけの小児科医ということになれば、患者の幼少の頃から現在までを知るわけです。となれば、その患者の「いいところ」、「がんばっているところ」を見てあげようという心理にかられることが起こるでしょう。となると、「日常生活能力」に関する評価も「軽く」なってしまうのです。
これはやさしさによるものです。しかし、こと障害年金の審査に関して言えば、あだとなるということをご理解いただければ幸いです。
障害年金を必要な方が、しっかりと受給できることを祈るばかりです。