執筆者:中斉徳久(社会保険労務士)
札幌ライラック社会保険労務士事務所所長。大学卒業後民間企業を経て、社会保険労務士になる。15年間障害年金の相談・請求代理業務・不服申し立てなどを専門に活動。過去の障害年金業務サポート数は1000件を超える。事務所所在地:札幌市厚別区厚別中央3条2丁目10-10ー102。地下鉄東西線「ひばりが丘駅」から徒歩9分。
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精神の障害年金にとって病歴・就労状況等申立書はとても大事です
札幌市厚別区で社会保険労務士を運営している中斉と申します。障害年金の請求代理業務・(再)審査請求などを手掛けて15年になります。
障害年金の請求において、必須の提出書類のひとつに「病歴・就労状況等申立書」があります。
ご存じの方のほうが多いと思いますが、これは医師が書くものではなく、病歴や就労状況、あるいは日常生活などについて、請求者自身が記載するものです。
障害年金請求するにあたり、同書類をどのように扱うかといった議論がよくなされます。
それは、障害年金を手掛けている社労士さんにおいても解釈はだいたい以下のパターンにわかれるでしょう。
1 (認定において)診断書の内容がすべてだから、申立書に何を書こうが意味がない。
2 申立書には必要最低限のことを書き、(行政側から)つっこみどころを作らないようにする。
3 診断書との整合性を損ねさえしなければ、必要最低限の記載でかまわない。
4 申立書は診断書に次ぐ貴重な資料となるのだから、詳細に記載すべきである。
だいたいこんな感じではないでしょうか。まあ、1~3はほぼ同じ意味です。申立書に対してあまり積極的にかかわろうとせず、必要最低限流れだけ書いておくパターンです。このようなスタンスの方はけっこう多いと思います。2にかんしていえば、社労士連合会の倫理研修では否定的な意見も出ていますね。いずれにしても、1~3は、申立書の効力に期待しないという考えでしょう。
たしかに、申立書を詳細に書こうが書かまいが、さほど意味のない請求というのは存在します。たとえば、人工関節を入れたような場合。これは、人工関節を入れたことによる障害年金です。3級に該当するものですが、初診日要件さえ問題なければ、特に日常生活について事細かく書く必要はないでしょう。必要はゼロとは言いませんがそれで2級になるということはほとんどないからです。こういった案件なら何となくの流れだけ記載しても大きな問題はないと思われます。似たようなケースとして人工透析における請求も当てはまりそうです。
では、どのような請求において、申立書を詳細に記すべきなのでしょうか?
代表的なものをあげると、それは精神の障害におけるものです。
特に遡及請求する場合は、病歴、就労状況、日常生活すべてにおいて詳細に書くべきだと強く訴えたいです。
日常生活状況はもちろん、発病から現在に至るまでの経緯を詳細に書きましょう
実は、筆者は特に意識してやっていたわけではありませんでした。
しかし、後で振り返ってみた時、精神の障害、その中でも特に遡及請求における申立書については、かなり詳細に書いていたことがわかったのです。
なぜ、そうなったかを自分なりに解析してみます。
遡及請求を行うといった時は、初診日からかなり時間が経過していることが多いからです。
つまりは、障害認定日頃に通院していた病院は、現在通院する病院とは違うことが多い。直接医師に「日常生活能力」についてお話する機会がないため、患者側から見て実際と解離のある診断書ができあがることはよくあるものです。医師にもよりますが、カルテに詳細に記載する先生ばかりではなく、薬の処方記録しか書いていない場合もあります。乱暴な言い方をすれば、想像で診断書を書いていることもあるのです。
となれば、遡及請求(障害認定日)の診断書が実際の日常生活との開きがあることは特に珍しくはなく、遡及請求がなぜ難しいかという理由がそこにあるということも容易に想像がつくでしょう。
精神の障害年金の認定基準には、「精神の障害の程度は、その原因、諸症状、治療及びその病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし」とはあります。
しかし、実際は診断書の内容のみで審査し、経過などは全く無視されることのほうがが多い。そう思わずにいられないのですが、一方で、しっかりと「経過」を考慮し、総合的に審査している認定医さんもいることは間違いありません。
となると、「経過」は大事になってきます。
筆者は、詳細な記載が必要とおもわれる案件の場合、依頼者への細部にわたる聞き取りはもちろん、依頼者が利用する福祉関係者等から、治療・病状の経過がわかる資料などの開示をお願いするようにしています。それを基にリアルな患者の声を申立書に反映させることによって、「ギリギリ」の案件をなんとかいい方向に着地させる可能性はゼロではないと信じています。
もちろん、うまくいかないこともあります。
しかし、後になって考えた時、申立ての内容が後押ししていたのではないかということが、年に何度かあるのは事実です。
そして、遡及請求する場合だけではなく、精神の障害において等級の当落線上にある場合なども、病歴や日常生活等について詳細に記すことはとてもだいじです。
まずは、あきらめずにやってみましょう!
あきらめずやっていれば、上手く進むこともあるのです。